[レポート] Inter BEE 2019で聞いてきた「メディア業界におけるクラウド活用最新事例」(その 1) #interbee2019
今年も Inter BEE の季節ですね!(挨拶
Inter BEE 2019 | INTER BEE ONLINE
11/13〜11/15 の日程で、幕張メッセにて開催された 音と映像と通信のプロフェッショナル展 。
展示イベントと平行して行われましたカンファレンスのうちのひとつ、SP-142 特別講演「メディア業界におけるクラウド活用最新事例 2019」を拝聴しましたのでレポートします。
こちらでは、下記の 7 つのプレゼンテーションが続けて行われました。
- メディア業界におけるクラウド活用最新事例 (前半)
- 金目 健二 氏 / アマゾンウェブサービスジャパン株式会社
- クラウドが可能にするメディア業界のイノベーション
- イシット・ヴァシュラジャーニ 氏 / アマゾンウェブサービス
- フジテレビの Cloud Strategy ~Now&Future~
- 金森 健彦 氏 / 株式会社フジテレビジョン
- サーバーレスアーキテクチャによる有料ライブ配信サービスの構築
- 三浦 一樹 氏 / 北海道テレビ放送株式会社(HTB)
- U-NEXT のマルチ CDN 戦略における CloudFront の活用事例と、自社開発ファイル転送システム「Snowpump」のご紹介
- 柿元 崇利 氏 / 株式会社 U-NEXT
- Alexa による TV 視聴の未来
- 北迫 清訓 氏 / アマゾンジャパン合同会社
- メディア業界におけるクラウド活用最新事例 (後半)
- 金目 健二 氏 / アマゾンウェブサービスジャパン株式会社
非常に分量がありますので、2 回にわけてお送りします。本記事では前半の 4 セッション(太字のもの)をレポートします。
なお本セッションは、HTB 三浦様と U-NEXT 柿元様のセッションを除いて撮影・録音禁止でした。
基本文字のみでのレポートとなります。うまく聞き取れなかったところもございますがご了承下さい。
メディア業界におけるクラウド活用最新事例 2019 (前半)
まず AWSJ の金目氏から、セッションの導入として、メディア業界におけるクラウドインフラの関わりについて簡単な背景紹介がありました。
スピーカー : 金目 健二 氏
- アマゾンウェブサービスジャパン株式会社 ソリューションアーキテクト
内容
- 事例は商用環境での事例
- 業界トレンド
- 大規模な変化
- 消費者習慣の変化
- コンテンツ及び流通企業の大規模 M&A
- 付加価値による視聴体験の向上
- メディアワークフローの変化
- メディア業界におけるクラウド活用が急速に進んでいる
クラウドが可能にするメディア業界のイノベーション
続いて AWS のイシット氏から、メディア業界に発生している変化とそこに係わる AWS のサービスについて、世界的な視点からプレゼンテーションが行われました。
スピーカー : イシット・ヴァシュラジャーニ 氏
- アマゾンウェブサービス エンタープライズストラテジスト
内容
※英語によるセッション(通訳付き)でした
- 視聴者行動の変化
- テレビ視聴時間の低下
- US 市場における有料テレビの非加入者数増加
- Code Never (一度もケーブルテレビを契約したことがない)
- Code Cutter (一度契約したケーブルテレビを解約した)
- 2019年でそれぞれ 30〜40%以上、右肩上がりの傾向
- 今日の視聴者は何をつかって・いつ・どこで視聴しているのか?
- 「コンテンツ企業と配信企業のどちらが主導権を握るか、を議論しているうちに、デジタル技術によって消費者の行動。期待、力学がかわってしまった」
- ボブ・イドガー /ウォルト・ディズニー
- クラウドはオーディエンスとメディア企業を再接続する
- AWS はメディアカンパニーを全ての場面でサポートする
- 制約から可能性へ
- AWS がどうイノベーションをサポートするのか?
- 迅速に実験、収益方法を探す
- 先進的な機能を誰もが利用可能に(AI など
- 最も重要なこと(コンテンツの作成、配信)にフォーカス
- アイディアを素早くスケールする。可能性をつぶさない
実験
- 発明には二つのことが必要
- 沢山実験できること
- 実験が失敗したときの影響が少ないこと
- そのことにより、よりたくさん実験ができる
- Andy Jessy /AWS CEO
- 制約 -> 可能性
- アイディアをテストするために大規模な先行投資が必要 -> 従量課金
- インフラセットの長い待機時間 -> 即時起動、俊敏性を向上
- 失敗のコストが高い -> 柔軟な方向転換が可能、リスクを軽減
- LIVE NATION
- クラウド活用により、実験の回数が 10 倍(10 回 -> 100 回
先進的な機能
- 制約 -> 可能性
- 限られたツールセット -> すぐに利用可能
- AI/ML は多くの開発者にとって高嶺の花 -> 全ての開発者が利用できる
- データの大規模分析が困難 -> 容易
- AWS にはたくさんのサービスがある、AI/ML やブロックチェーンもある
- 様々なユースケースに対応可能
- AWS の ML スタック
- AI サービス
- ML サービス
- ML フレームワークとインフラストラクチャ
- 野球中継での ML SageMaker の利用例
- 一塁の走者が盗塁する可能性をリアルタイムに推論
最も重要なことにフォーカス
- 新しい製品
- IT リソースをイノベーションへ
- 成長に繋がるアイディアに投資
- Netflix はデータベース分析、リコメンデーションエンジン、動画トランスコーディングなど、コンピューティング度ストレジのほぼ全てのを AWS で解決
スケール
- 制約 -> 可能性
- 革新的なアイディアが実を結ばずに終わる -> 市場投入時間を短縮
- グローバルにスケール
- 処理能力の不足がない、大規模な展開を実現
- AWS のグローバルプラットフォーム
- Fox Sports
- ロサンゼルスとモスクワでグローバルコラボレーションを実施
所感
メディア業界の変化と、そこにクラウド、特に AWS がどう位置づけられるのか、短い時間に凝縮されたセッションでした。
確かに、ディズニー社が Lucas や MARVEL や Fox を買収し、ついに独自のコンテンツ配信を始めるといったニュースを知っていると、引用された言葉には「なるほど」とうなずかせられました。
フジテレビの Cloud Strategy ~Now and Future~
スピーカー : 金森 健彦 氏
- 株式会社フジテレビジョン 技術局 計画部 デスク担当部長
- 2017 年計画部に異動、技術局の全体戦略・予算立案及び管理に従事
内容
- 技術的視点、社会的視点
- キーワード:OPTIMIZATION(最適化)
なぜクラウド?なぜ AWS?
- 「クラウドファースト」ではない
- 最適化を前提にオンプレ・クラウドを組み合わせている
- 技術的視点
- 情報システム系のインフラ
- クラウドファースト
- 政府:クラウド・バイ・デフォルト原則が示されている
- 政府:生産性革命 Society 5.0、デジタルトランスフォーメーション時代の到来
- 放送系インフラ
- クラウドファースト?
- 放送系インフラのパラダイムシフト
- リニア -> ノンリニア
- SDI -> IP ストリーム
- ハードウェア -> ソフトウェアベース
- IT 化 -> クラウド
- 予想:ここ数年でクラウド化のハードルの高さはガラッと変わるのではないか
- 社内的視点
- スマホと PC 接触時間の急伸
- Netflix など配信の台頭
- 配信への挑戦 -> クラウドとの相性が最良
- 深刻な人材難&働き方(番組の作り方)改革
- 長時間労働を前提と出来ない
- -> DX の実現、業務の生産性を高める
- Speech To Text (自動文字起こし)などの活用
- 放送業界全体でクラウド対応は必須
- 変化のための 3 要素
- ひと、業務プロセス、技術
- 技術以外はこれから
なぜ AWS?
- AWS First、ではない
- 他ベンダとコストなど比較した
- 単独クラウドかマルチクラウドか
- 結果として AWS を一番使っている
- 理由
- 提供サービスが多い、特にメディア向け
- 豊富なサードパーティ製品、マーケットプレイス(エコシステム)
- 驚異的なサービスリリース
- 豊富な知見(社内で 2014 年〜実証実験実施)
- 8/23 の AWS 障害
- クラウドでも障害は起こりうるという認識
- AZ 分離、Elastic(弾力性のある状態)に構築していた -> 影響なし
- オンプレで同規模の障害があったとしたら、サービス停止は避けられなかったと思われる
- 逆にクラウドの良さが際立った
- 情シス系で AWS を使っているもの
- 番宣システム
- マネージドサービス+サーバーレス
- ストレージは S3
- 社内データ・バックアップ
- フジテレビのインターネットサイト
- マスの規模が生かせない分野ではクラウドは不利
- 番宣システム
- 放送系では
- 湾岸スタジオ ドラマオンライン搬入システム
- 配信インフラ
- プチフジ OTT 配信システム
- AWS + Azure マルチクラウド
- 未来
- 情シス系:クラウドファースト -> クラウドネイティブ
- 放送系は?
- 放送の流れ
- 各局でそれぞれマスタ素材を持たなくてもよい時代がくる
最後に
- 放送局の皆様へ
- クラウドは試用を! 鍵は人材育成
- 放送システムメーカーの方へ
- もっと勉強を! 日本のメーカーは世界と比べて遅れている
- 設備を売ることからサービスを売る事への変化を
- クラウドベンダーへ
- より安く、よりサービスを拡充してください
- 協業と競争
- 鳳珠業界の未来を共創
所感
冒頭に「一般的な(当たり前の)話しかしない」と断られてからのセッションでしたがそんなことはなく、豊富な経験に裏打ちされた貴重なお話でした。興味深く拝聴させて頂きました。
サーバーレスアーキテクチャによる有料ライブ配信サービスの構築
※冒頭で写真撮影 ok 、また同じタイトルでブログ公開済みとのこと。
スピーカー : 三浦 一樹 氏
- 北海道テレビ放送株式会社(HTB)
コンテンツビジネス局 ネットデジタル事業部
内容
- 「学習コストはどんどん下がっている」
- 地方局において、新たなビジネスモデルの構築が急務
- 収益に関する解決策の一つ
- 視聴データ
- 課金サービス
- クラウドは現状でも安い
- 水曜どうでしょう祭 2019
- 有料ライブサービス、アーカイブなし
- TV の生放送と同じ感じでやって欲しい、との要件
- 1 万人来ても耐えられる(根拠は不明
- 3 人で構築、3 人とも本番環境としては未経験
- AWS 部分でクラスメソッドの QA(コード提供とかは無し)
構成
- SPA
- Vue (Nuxt.js) + React + Angular
- GitLab
- 初 CI/CD
- SaaS
- stripe + THEO player + Auth0 + Multi DRM Kit
- stripe : 試験で課金かからない、カード番号を持たずに使える
- Auth0 : SNS アカウントでのログイン機能が簡単に実装可能。半分くらいは本の通りに作った
- あまりコード書かずに SaaS を組み合わせて作れる世の中になっている
- 配信
- YouTube にも流す
- 違法アップロード対策(コンテンツ検証ツール)用
- ディレイは気にしなくて良い
- 安定に動作することが最優先
- DRM は必須
- 構成はほぼ一択だった
- YouTube にも流す
学習方法
- ブログ、本、ドキュメント、、、
- 1 年前:EC2 触ったけど楽しくなかった、DB は何に使うのか分からない
- ゴールを実現するために本当に必要なものだけを勉強する
- 勉強するならサーバーレス
- 困ったとき:公式ドキュメント
- これが最強
- 技術ブログ:
- Developers.IO
site:dev.classmethod.jp {○○}
で検索!- Qiita
- ほぼコピペで作れる
- ググれば何とかなる
- コミュニティ
- JAWS-UG
- Media-JAWS
- JAWS FESTA 2019 SAPPORO
- HTBで開催
- JAWS DAYS 2020
「難しそう。。。」?
- 放送技術者はもっと難しいことをやってきている
- ARIB / IPTVフォーラム
- ATSC / DVB
- ※いずれもデジタル放送に関する技術規格や既定等
- 熱量で支えよう
- いっしょにサービス実装しましょう!
所感
短期間で、しかもほぼゼロから独力で配信プラットフォームを作り上げられた事例の紹介でした。理論上は可能としても、本当にそれを実現してしまうというのは素晴らしいですね。
セッション内で語って頂いたとおり 弊社も少しだけお手伝いしています ので、よろしければそちらもご覧ください。
構築するための学習についての話で語られた「本当に必要なものだけを勉強する(そうでないと面白くないので長続きしない)」というのは、ほんとうにその通りだと思いました。新しく始めたいことのために新しい技術を習得するのは本当に楽しいので、是非皆さんも挑戦してみてください。その際には弊社も微力ながらお手伝いしたいと思います!